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・ヤン・シュヴァンクマイエル


ヤン・シュヴァンクマイエル編~


アニメと聞くとみなさんは何を思い浮かぶでしょう?
宮崎アニメ?ディズニー?ルパン?ドラえもん???
最近公開された「モンスターズ・インク」のようなCGアニメ?

ここでお薦めするのはその様なアニメではなく
クレイアニメ(粘土アニメ)やパペットアニメーション(人形アニメ)

チェコにヤン・シュヴァンクマイエル(1934~)という映像作家がいる
この作家を語る上で特に重要なことはチェコが歩んできた歴史です

今でこそ資本主義が導入されていますが、
1939~45のナチス侵略(ファシズム)に始まり
48~68のスターリン主義(全体主義) 69~89のソ連占領と
89年のビロード革命、93年のスロヴァキアとの分裂
まさに激動の時代を経てきている

ヤンは若い頃、チェコの伝統的な人形製作を学んだ後、
プラハ劇場などの美術監督を勤め1960年代中頃からチェコの伝統を取り入れた
人形を使い、コマ撮りする事でアニメーションにするパペットアニメの制作を始める
これは1年かけても15分ほどしか作れないような根気のいる作業で、
短編でも1年以上製作期間が必要になる

ところが、まだ数作しか制作していない頃、ソ連の侵略(68)に合い
そこから約7年間映画の製作を禁じられ、ソビエト検閲下に置かれる
(この頃チェコのシュルレアリスムグループに参加し地下活動することになる)

検閲には触れず、なをチェコの人々には理解できるような見立て(比喩)や
ストーリーで社会主義を批判するような作品を制作し何度も上映禁止になる
後に、ヤンは「この時代に西側へ亡命していたら、また、自由に映画製作を
許されていたらこの様な自分の創作活動の中で重要な作品は生まれなかっただろう」
と話している
(やはり良い作品は圧力の中から生まれるという証明?)

映画ページでも紹介している「対話の可能性」なども上映禁止になった1作で
アルチンボルド(野菜などの現実的な素材を並べ人の顔などに見立てる技法)
で描かれた向かい合う2人の人物が、お互いを呑み込み、吐き出し、
混じり合う事でどんどん細かくより人間に近づいていく・・・
そしてついには同じもの(コピー)がどんどん生まれてくる
(何か日本にもある光景だが)

テーブルを挟んだ両側に粘土で出来た人間が2人で座っている
初めは歯ブラシを出すと歯磨きが出てくる 靴を出すと紐を結んでくれる
パンにはバターを塗ってくれる 鉛筆を出すと削ってくれる
と上手くいっていた関係が頭の位置が変わったところから微妙にずれていき
最後には同じものの衝突になる
お互いが疲れ果て、崩れ始めると対話が終わってしまう

この様に社会主義の批判や文化の違いによる衝突などをテーマに撮り続け
ビロード革命(89)後は人の本来持っている本能から来る「悦楽」やフェチズムを
テーマに長編を作り続ける
現在はコマーシャリズム(利益主義)と戦っている

ブラザーズクエイ(映画ページ参照)を上質なファンタジー
ディズニーをイミテーションのファンタジーで手軽な土産物
ヨーロッパの文化を子供の心の中で壊す危険なもの
自分はシュルレアリストで、作品もシュルレアリスムだ!と言い切るあたり

未だに過激なじいさんです

興味のある方は「夜想2-:+」の0号「シュヴァンクマイエル」をご一読ください



「対話の可能性」より




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